「教育資金が貯まらない」と悩む親が見落としがちな家計見直しの盲点
お子様のご誕生、誠におめでとうございます。新しい家族が増えた喜びとともに、将来かかる教育資金について、漠然とした不安を感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。「教育資金、一体いくら必要なのだろう?」「今の貯蓄で足りるのかな?」といった悩みは、子育て世代なら誰もが一度は直面するものです。
でも、ご安心ください。子どもが生まれた今こそ、教育資金について真剣に考え、計画を立て始める絶好の機会です。将来必要となる資金を見える化し、着実に準備を進めることで、漠然とした不安は具体的な目標へと変わり、安心して子育てに取り組むことができるようになります。
このガイドでは、お子様が生まれたばかりのあなたが、教育資金の準備に向けてまず何から始めるべきか、そしてどのように家計を見直し、効率的に資金を貯めていくかについて、ファイナンシャルプランナーの視点から詳しく解説します。
■■ 1.教育資金、一体いくら必要?全体像を掴もう
まず、漠然とした不安を具体的なものにするために、おおまかな教育資金の目安を知ることから始めましょう。教育資金は、進路によって大きく異なります。文部科学省や日本政策金融公庫などの調査データから、幼稚園から大学卒業までにかかる教育費の目安を見てみましょう。
進路パターン | 幼稚園~高校(学習費総額) | 大学(入学金・授業料等) | 合計(目安) |
---|---|---|---|
全て公立 | 約540万円 | 約250万円 | 約790万円 |
幼稚園から高校まで私立、大学公立 | 約1,380万円 | 約250万円 | 約1,630万円 |
全て私立 | 約1,380万円 | 約400万円~550万円 | 約1,780万円~1,930万円 |
※上記の金額はあくまで目安であり、学校の種類(学部)、地域、塾や習い事の費用、自宅外通学の費用などは含まれていません。特に私立大学の理系や医学部などは学費が高くなる傾向があります。
この表を見ると、「思っていたよりかかるな…」と感じる方もいるかもしれません。しかし、これはあくまで目安です。全てを貯蓄で賄う必要はありませんし、奨学金制度なども活用できます。大事なのは、将来必要となるであろう金額の全体像を把握し、計画的に準備を進めることです。
■■ 2.「足りないかも…」と感じたら、まず現状把握から
教育資金の目安を知り、不安を感じたとしても大丈夫です。まずは現状を正確に把握することから始めましょう。
【ステップ1】:家計の「見える化」
現在の家計の収入と支出を正確に把握しましょう。手書きの家計簿はもちろん、家計簿アプリや表計算ソフト(スプレッドシートなど)を活用するのも良い方法です。最低でも1ヶ月、できれば3ヶ月ほど家計簿をつけて、何にどれくらいお金を使っているかを「見える化」します。
収入(給与、児童手当など)
支出(固定費:住居費、水道光熱費、通信費、保険料、車のローンなど / 変動費:食費、日用品費、娯楽費、交際費など)
特に変動費は意識しないと無駄遣いが増えがちです。何にいくら使っているかを知ることが、見直しの第一歩です。
【ステップ2】:現在の貯蓄額と貯蓄ペースの確認
現在、いくら貯蓄があるのか、そして毎月いくら貯蓄できているのかを確認します。普通預金、定期預金、積立貯金、学資保険、投資信託など、様々な形で保有している資産の合計額を把握しましょう。
【ステップ3】:将来のライフイベントも考慮に入れる
教育資金だけでなく、今後起こりうる大きなライフイベント(住宅購入、車の買い替え、リフォームなど)にかかる費用も考慮に入れておく必要があります。これらのイベントと教育資金の準備時期が重なる可能性も念頭に置き、資金計画を立てることが重要です。
これらのステップを通じて、現在の家計の状況、貯蓄のペース、そして将来の支出予定を把握することで、「いつまでに、いくら足りない可能性があるのか」が具体的に見えてきます。
■■ 3.教育資金準備のための具体的なステップ
現状を把握したら、いよいよ具体的な準備に取り掛かりましょう。
【ステップ1】:明確な目標設定
いつまでに、いくら教育資金を貯めたいのか、具体的な目標額と期限を設定します。例えば、「子どもが15歳になるまでに300万円を教育資金として確保する」といった具体的な目標を設定することで、毎月・毎年どれくらい貯める必要があるかが明確になります。
目標設定の際は、前述の教育資金の目安を参考にしつつ、ご自身の希望する進路や家計状況に合わせて現実的な目標を設定することが大切です。
【ステップ2】:家計の見直しと貯蓄力のアップ
目標設定ができたら、その達成に向けて家計を見直し、貯蓄力をアップさせましょう。
◆ 固定費の見直しは効果大!
家計の中で大きな割合を占める固定費は、一度見直せば継続的な削減効果が期待できます。
・住居費:
可能であれば、家賃や住宅ローンの見直しを検討します。
・通信費:
スマートフォンを格安SIMに乗り換えたり、インターネット回線の契約を見直したりすることで、大幅な削減が期待できます。
・保険料:
加入している保険の内容を確認し、本当に必要な保障内容か、保険料は適切かをチェックします。ライフステージの変化に合わせて見直すことで、無駄を省ける場合があります。
・各種サブスクリプションサービス:
利用していない定額サービス(動画配信、音楽配信、アプリなど)があれば解約を検討します。
◆ 変動費はメリハリをつけて管理
食費や娯楽費などの変動費は、日々の意識でコントロールが可能です。
・食費:
外食やコンビニエンスストアでの購入を減らし、自炊を増やす、買い物リストを作成して無駄買いを防ぐなど、少しの工夫で節約できます。
・娯楽費:
予算を決めて、その範囲内で楽しむようにします。
・日用品費:
まとめ買いやプライベートブランドの活用なども有効です。
家計の見直しは、単に切り詰めることではありません。何に価値を置くのかを家族で話し合い、必要な支出にはしっかりお金をかけつつ、それ以外の部分で賢く節約することです。「見える化」した家計簿を見ながら、削減できる項目を探してみましょう。
【ステップ3】:効率的な貯蓄方法を検討
家計を見直して生まれた資金を、教育資金として効率的に貯めていく方法を検討します。
・先取り貯蓄:
給与が振り込まれたらすぐに一定額を別の口座に移す「先取り貯蓄」は、確実に貯めるための最も効果的な方法の一つです。会社の財形貯蓄制度や、銀行の自動積立定期預金などを活用しましょう。
・児童手当の活用:
児童手当を子どもの教育資金用の口座に毎月貯めていくのも良い方法です。0歳から中学校卒業まで支給される児童手当を全額貯めると、約200万円近くになります。
・学資保険:
将来の教育資金を貯めるための保険商品です。満期時に学資金や祝い金が受け取れます。ただし、途中解約すると元本割れするリスクや、インフレによって将来受け取る金額の実質的な価値が目減りするリスクがある点には注意が必要です。契約内容をよく理解し、他の貯蓄方法と比較検討することが重要です。
・NISAやつみたてNISAを活用した資産運用:
長期的な視点で教育資金を準備するなら、NISAやつみたてNISAといった非課税制度を活用した資産運用も検討に値します。毎月一定額を投資信託などで積み立てていくことで、複利の効果により効率的に資産を増やせる可能性があります。ただし、元本保証はなく、市場の変動によっては評価額が下がるリスクがあることも理解しておく必要があります。教育資金の全てを運用に回すのではなく、一部をリスクを抑えて運用するなど、ご自身のierrezリスク許容度に合わせて検討しましょう。
・その他:
積立定期預金や財形貯蓄など、様々な貯蓄方法があります。ご自身の貯蓄ペースや目標に合わせて、複数の方法を組み合わせるのも良いでしょう。
■■ 4.教育資金準備でよくある疑問・不安
◆ いつから始めるべき?
答えは「今すぐ」です。教育資金の準備は、早く始めるほど有利です。時間を味方につけて、少額からでも継続して貯めることで、将来大きな金額になります。
◆ どれくらいのペースで貯めればいい?
目標額から逆算して、毎月・毎年どれくらい貯める必要があるかを計算します。無理のない範囲で、継続できるペースを設定することが重要です。家計の見直しと合わせて、貯蓄に回せる金額を増やしていきましょう。
◆ 運用は怖い?
資産運用にはリスクが伴いますが、長期・積立・分散投資を基本とすることで、リスクを軽減しながら効率的な資産形成を目指すことができます。教育資金の一部を、お子様の年齢やご自身のリスク許容度に合わせて無理のない範囲で運用することも検討価値があります。まずは少額から始めてみるのも良いでしょう。
■■ 5.「見える化」と定期的な見直しの重要性
教育資金の準備は、一度計画を立てたら終わりではありません。お子様の成長やご自身の働き方の変化、社会情勢などによって、必要な教育資金の額や家計状況は変化します。
定期的に(年に一度など)教育資金の貯まり具合や家計状況を確認し、必要に応じて計画を見直すことが重要です。家計簿アプリなどで「見える化」を続けることで、お金の流れを常に把握し、計画からずれそうになったらいち早く気づいて軌道修正できます。
■■ 6.一人で悩まず、専門家にも相談を
家計の見直しや教育資金の計画について、一人で考えてもなかなか前に進まない、これで合っているのか不安だ、という場合は、ファイナンシャルプランナー(FP)などの専門家に相談することも検討してみましょう。
FPは、あなたの家計状況やライフプランを丁寧にヒアリングし、最適な教育資金の準備方法や家計管理のアドバイスをしてくれます。第三者の視点から客観的な意見をもらうことで、より現実的で効果的な計画を立てることができます。
■■ まとめ:計画的な準備で、安心して子育てを楽しもう
お子様が生まれたばかりの今、教育資金について考えることは、決して早すぎることはありません。むしろ、スタート地点に立った今だからこそ、計画的に準備を進める最大のチャンスです。
まずは教育資金の目安を知り、現在の家計状況を「見える化」することから始めましょう。そして、明確な目標を設定し、家計の見直しを通じて貯蓄力をアップさせ、ご自身に合った方法で着実に教育資金を貯めていくことが重要です。
全てを完璧に行おうと気負う必要はありません。できることから少しずつ、継続して取り組むことが大切です。計画的な準備と定期的な見直しを行うことで、教育資金に対する不安は軽減され、お子様の成長を安心して見守り、子育てを心から楽しむことができるはずです。
このガイドが、あなたの教育資金準備の一助となれば幸いです。
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